研究概要 |
研究成果 細胞質ばかりでなく核内にもグルタチオンS-トランスフェラーゼπ(GSTπ)が存在するアポトーシス抵抗性の大腸癌由来の培養細胞に、抗がん剤や過酸化水素を投与すると、核内GSTπの存在量が増加することを観察した。上記の細胞において、マッシュルームレクチン(ABL)を投与することでGSTπの核蓄積を阻害すると、シスプラチン(CDDP)やドキソルビシン(DOX)により、アポトーシスが誘導されることを見出した。以上の結果から、核内GSTπが抗がん剤に対する解毒反応を触媒することにより、薬剤のDNAへのintercalationやcross-linkingを阻害し、がん細胞の薬剤感受性を低下させていることを明らかにした(FASEB J.,2001)。 そこで上記の研究成果に基づき、核にGSTπの存在が認められる三種のがん細胞(大腸癌、肺腺癌、神経膠芽細胞腫由来)にABLを前投与した場合、どのような抗がん剤の薬剤感受性が増加するのか、また、大腸癌由来の細胞以外にも薬剤感受性が増加する細胞が存在するのかどうかについて検討した。 ABLを前投与すると、三種の細胞全てで、GSTπの核蓄積が阻害された。その状態では、全細胞でCDDPやDOXに対する薬剤感受性が著しく増加し、アポトーシスが誘導されたが、VP-16と5-FUに対する薬剤感受性の増加は見られなかった。また、大腸癌でのみ、CPT-11に対する部分的な薬剤感受性の増加が観察された。これらの結果から、GSTπの核蓄積の阻害は、がん細胞のCDDP, DOX, CPT-11に対する薬剤感受性を増加させることが示唆された(Jpn.J.Cancer Res.,2002)。
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