カルニチン欠乏マウス(JVSマウス)がどのような機構によって心肥大を発症するかを明らかにするために以下の検討を行なった。 1)食餌中の脂質量の心肥大発症に及ぼす影響。2)JVSマウス肥大心室特異的に発現抑制がみられるCDV-1遺伝子の発現調節領域に関与する転写因子。3)Differential display法によって、JVSマウス肥大心室特異的に発現が増強する新規遺伝子の探索。 その結果、以下の成果を得た。 1)食餌中の脂質量を減らすことによって心肥大の程度は軽減した。一方、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)mRNAレベルは、低脂質食によって心肥大が軽減したとき、発現増強が軽減された。しかし、カルニチン欠乏であっても利用できる、中鎖脂肪酸からなる中性脂質を添加しても、心肥大やANP遺伝子発現増強を軽減することはなかった。また、コントロールマウスおよびJVSマウス心室において、ATPレベルやenergy chargeにも違いはなかった。以上のことから、カルニチン欠乏によって起こるJVSマウスの心肥大は、エネルギー欠乏によってではなく、代謝されない脂肪酸の毒性によって起こる可能性が高いことが示唆できた。 2)マウスCDV-1遺伝子のプロモーター領域に存在するシスエレメントを用いて、心室組織核タンパク質試料の結合活性をゲルシフト分析にて比較した。Sp-1やNkx-2.5エレメントについては、コントロールと結合活性に差はなかった。CREBエレメントをプローブにした場合に、JVSマウス心室より調製した核タンパク質試料において、30%程度シグナルが弱かった。CDV-1遺伝子の発現抑制にcAMP系のシグナルが関与する可能性を示唆できた。 3)JVSマウス肥大心室特異的に発現が増強する新規遺伝子(CDV-3)を同定した。その1次構造上の特徴から、CDV-3タンパク質は核に存在する可能性を指摘した
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