Rhesは脳の線状体に発現するRasファミリー低分子量GTP結合蛋白質として発見されたが、その機能は不明である。申請者らがTwo-HybridスクリーニングでRhesと結合する分子として得たアンキリンリピートを持つ4回膜貫通蛋白質(ARMS、ankyrin repeat-rich membrane spanning)は、発生過程で軸索伸長中の神経細胞が多い脳領域で発現すること、PC12細胞のNGF刺激による分化において伸展した突起の先端に集積することなどから、軸索伸長やシナプス形成に関与すると推測されている。ARMSのC末端側細胞内領域に対するポリクローナル抗体を作製してWestern blot解析を行ったところ、PC12細胞において約220kDaの膜蛋白が検出され、内在性のARMS蛋白質と考えられた。ARMSがNGF受容体の下流分子であるとの報告から、RhesがARMSを介してNGFのシグナル伝達に関与する可能性を考え、Rhesの野生型及びdominant active変異体をPC12細胞に過剰発現させたが、NGF刺激時に見られるような突起伸展は認められなかった。しかし、Rhesのdominant negative変異体を発現させると、NGF刺激による突起伸展が著明に抑制された。Rhesに最も類似した構造(エフェクター結合領域は完全に一致)を持つDexras1のdominant negative変異体にはこのような作用は認められなかった。NGF刺激により分化したPC12細胞においては、Rhesは伸展した突起にも局在していた。
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