1)活性酸素産生能については化学発光試薬を使い分けることによりH.pyloriはbacillary型はMCLAで検出できるスーパーオキシド、coccoid型ではL-012で検出できるOHラジカルを産生することが判明した。さらに、S.mutansは、これまで過酸化水素を産生すると考えられてきたが、低酸素環境下ではNADH oxidaseの1型によりスーパーオキシドを産生することを組み換えタンパク質を用いた電子スピン共鳴装置により明らかにした。さらに、NADH oxidaseをノックアウトしたS.mutansは培地中に過酸化水素を放出できなくなることも明らかにした。 2)8-OH-GとDNAの断片化を電気泳動法により解析した結果、H.pyloriでは低酸素環境下では遺伝子の酸化傷害は起こりにくいが嫌気あるいは高酸素では著明な酸化傷害が生じ、遺伝子変異を惹起する可能性が考えられ、論文に発表した。 3)菌体の抗菌剤に対する耐性株の出現は、薬剤耐性遺伝子の変異と耐性株の選択という微生物進化によるが、それが酸素環境の変化や酸化ストレスにより引き起こされているか否かをマクロイド系抗生剤に対する耐性株の出現率で解析した結果。H.pyloriは、低酸素環境下では突然変異をおこさないが、嫌気あるいは高酸素で著明な突然変異を起こすことが判明した。 4)S.mutansの一酸化窒素による代謝の実験の途中で、NOの代謝産物であり、口腔内に多量に存在する亜硝酸塩を菌体と共存させると酸素濃度にかかわらず、NOが菌体より産生することが明らかになった。亜硝酸還元酵素が存在すると考えられるが、これまで、本菌での亜硝酸還元酵素の存在は知られていない。データーベースから亜硝酸還元酵素の候補を2種拾い上げ、現在PCRクローニングに成功し塩基配列を明らかにしている。
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