銅結合プリオンタンパク質の調製:プリオンタンパク質(PrP)の銅結合部位(アミノ酸配列23-98)とGSTタグあるいは全長(アミノ酸配列23-231)PrP_<23-231>とDsb A-Sタグとの融合タンパク質を大腸菌で発現させ、精製標品を得た。この標品を銅イオンと尿素存在下でインキュベート後、尿素を除いた後に、遊離の銅イオンを除く、2段階の透析を行って銅結合PrP_<23-98>あるいはPrP_<23-231>を調製した。 ニトロソチオールの分解:ニトロソグルタチオン(GSNO)やニトロソアルブミンの分解によるNOの生成が銅結合PrP_<23-98>により促進されることが観察された。この促進は一価および二価の銅イオンのキレート試薬によって抑制された。PrP_<23-98>に結合した銅イオンの一部がGSNOの存在下でPrP_<23-98>から遊離することが遠心限外濾過法によって観察されたので、遊離した銅イオンによるGSNOの分解に対して補正をすると、PrP_<23-98>に結合した銅による分解の促進は、遊離の銅(グリシン銅キレート)による促進と比較すると30%程度であったが、PrP_<23-98>に結合した銅が確かにRSNOの分解を触媒することが明らかとなった。 PrPの酸化傷害:銅結合PrP_<23-231>を還元性物質(アスコルビン酸、グルタチオン、ドーパミン)とインキュベートし、分解と凝集をSDS-PAGE後の免疫染色で、また、酸化的傷害の指標であるカルボニル基の生成を免疫ブロッティング法により定量した。前記のいずれの還元性物質を用いてもカルボニル基の生成が認められた。PrPの分解物や凝集体の生成はアスコルビン酸とドーパミン存在下で顕著であった。凝集体の主なものはその大きさからダイマーであると考えられた。PrPの分解と凝集、カルボニル基の生成はいずれも銅イオンのキレート試薬、カタラーゼ、SODにより抑制されたことから、PrPの酸化的傷害には銅イオンを介するROSの生成が関与していると考えられた。
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