研究概要 |
本研究では、ヒトインスリンのC末端にGFPを融合したキメラ蛋白質を初代培養膵β細胞に発現させることでインスリン顆粒を標識し、エバネッセント顕微鏡下で顆粒の供給、docking、fusionをリアルタイムでかつ単一顆粒レベルで画像解析し、以下の点を明らかにした。 1)インスリン顆粒は予め形質膜にdockingしており、高グルコース刺激を行うと、はじめの240s間は予めdockingしている顆粒からのfusionが見られ(第1相)、その後は、新たに供給されて形質膜上にdockingした顆粒からのfuisonが10min以上にわたって観察され(第2相)、膵β細胞におけるインスリン分泌の2相性が単一顆粒レベルで明らかとなった。 2)第1相で観察される予めdockingしている顆粒に比べて、第2相で観察される新たに供給された顆粒のdocking時間は50ms以下と非常に短く、第1相と第2相におけるインスリン顆粒の開口放出機構が異なっている可能性が示唆された。 3)2型糖尿病モデルGKラットでは正常ラットに比べて、第1相におけるfusion event数は大きく低下したが、第2相におけるfusion event数は正常ラットと同程度であった。GKラットでは予めdockingしているインスリン顆粒数が正常ラットに比べて大きく減少しており、このことがGKラットでの第1相におけるfusion event数減少を引き起こしている可能性が示唆された。 4)TAT-conjugated Cy3標識抗体を用いて生細胞内のsyntaxin, SNAP25をラベルしたところ、syntaxin, SNAP25はともに約400nmのクラスターを形成して形質膜に局在しており、このクラスターに選択的にdockingしているインスリン顆粒よりfuisonが起こることがわかった。このexocytosis部位とCAZ(cytomatrix at the active zone)蛋白質との関係は現在検討中である。 この様に、分子生物学的手法と画像解析技術を組み合わせることにより、単一インスリン顆粒開口放出の素過程を明らかにすることができた。
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