研究分担者 |
池本 和久 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手 (40351019)
白石 弘章 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手 (80319285)
野村 隆英 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (20156227)
一瀬 宏 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (90192492)
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研究概要 |
生体内でGTPから生合成されるテトラヒドロビオプテリン(BH4)は、フェニルアラニンの代謝を行うフェニルアラニン水酸化酵素、カテコラミンやセロトニンの生合成の律速段階を触媒するチロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素の補酵素であり、一酸化窒素合成酵素の活性に必須のコファクターである。BH4は神経系、免疫系、循環器系といった生体内の多彩な機能の調節に重要な役割を果たしていることが考えられ、多くの疾患との関連があることが予測される。当研究室ではBH4の不足によって生体内の恒常性維持にかかわる情報伝達が機能しないとき神経および非神経組織が細胞レベルや個体のレベルでどのような影響をうけるのかを明らかにするため、BH4生合成の第2段階を触媒する6-ピルボルテトラヒドロプテリン合成酵素(PTPS)遺伝子ノックアウト(PTPS-KO)マウスを作成したが、このマウスは生後48時間以内に死亡した。 このため本研究ではPTPS-KOマウスの生存期間を延長する目的でドパミンβ-水酸化酵素遺伝子のプロモーターに、ヒトPTPSのcDNAを結合したベクターを用いてトランスジェニックマウスを作成した。発現量とパターンに違いのあるものが数ライン得られ、PTPS-KOマウスのヘテロ接合体と交配して、マウスのPTPS遺伝子は全組織で欠損するが、交感神経節や副腎髄質などでヒトPTPSを発現し、これらの組織ではBH4を産生するマウス(PTPS-KO,DPS6)を作成した。 PTPS-KO,DPS6は離乳後も生存可能で、プレリミナリーな結果では、PTPS-KO,DPS6マウスの離乳時の体重は同腹兄弟の60%程度と発達遅延がみられた。8〜12週齢の時点で血漿フェニルアラニン値は、野生型マウスの37.4倍に達した。現在生化学分析と組織化学分析をおこなっている。 PTPS-KO,DPS6マウスはヒトの悪性高フェニルアラニン血症の疾患モデルマウスであり、BH4欠損の神経発達におよぼす影響やMaternal PKUの治療法の開発、また血管病変に対するBH4の関与を検討するためにも有用である。
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