研究概要 |
昨年度は11p15に位置するMUC遺伝子群(MUC2,MUC5AC, MUC6)の発現を、胃がん手術検体74例のホルマリン固定パラフィンブロックより作成した切片を用いて、MUC2,MUC5AC, MUC6蛋白に特異な抗体と、これに加え腸上皮化生上皮に陽性となるCD10に対する抗体も用いて、免疫組織化学的に検討した。その結果、EBV感染との強い相関が見られ、胃型腸型両者とも陰性となるグループと胃型のグループに大半が入り、特に陰性胃癌と比較し、両者とも陰性となるグループの頻度が特異的に高く認められた。このため今年度は、このようにEBV陽性の胃癌で特異な所見が見られた機序についてその意義を調べるため、胎児胃4例と肥厚性胃炎と臨床診断が加えられた症例の胃生検検体一例を用いて調べた。胎児胃では体部腺は未熟で、腺組織はわずかだが、腺頸部においてMUC5AC, MUC6両者に陰性を示す細胞の胞巣を認めた。これらの細胞は腺窩上皮や体部腺の主細胞への分化前の細胞と考えられた。また、肥厚性胃炎生検検体ではよく発達した体部腺の腺頸部に同様に、両者とも陰性の細胞が少数ではあるが認められた。EBV感染陽性の胃癌ではこのような分化前に細胞が癌化していることが考えられ、癌が進展、分化を示しても、胃型の分化を示すのみで、腸型を示すことはまれであると考えられる。上記の結果得たので現在投稿準備中である。また、胃型、腸型の形質がどのような機序で選択されているか明らかにするため、MUC2,MUC5ACそれぞれのプロモータ領域のメチル化に関する実験の準備を進めている。
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