研究概要 |
昨年度までに11p15に位置するMUC遺伝子群(MUC2,MUC5AC,MUC6)の発現を胃癌手術検体、胎児胃、肥厚性胃炎の症例で検討した。 今年度はMUC2,MUC5ACの上流域について免疫細胞化学的および、メチル化シトシン特異的制限酵素(HPaII)で切断後のPCRにて検討した。6種の胃癌細胞株(MKN-1,MKN-7,MKN-74,TMK1,AGS,NU-GC-3)および、それらにEBVを持続感染させた細胞株について検討した。また実際の手術検体でもMUC2,MUC5ACの上流域のメチル化状態を決定し、昨年度までに免疫組織化学的に得られていた発現と比較した。 その結果、胃癌細胞株ではMUC2はTMK1で陽性であったが、EBV感染後のTMK1では陰性とEBV感染による違いが得られた。制限酵素処理後のPCRによる検索ではNU-GC-3のみ非メチル化状態で、他はメチル化状態であった。 MUC5ACについてはTMK1,MKN1,NUGC3は非メチル化状態でEBV感染後にはいずれもメチル化状態となり、メチル化の亢進を認めた。しかし、免疫細胞化学的な発現ではTME1のみが陽性で、いずれもEBV感染による違いは認めなかった。 手術症例ではEBV関連胃癌3例を含む22症例を検討し、MUC2は免疫組織化学的に8例で陽性であり、DNAは全例でメチル化状態であった。MUC5ACのメチル化状態は13例で検索しえたが、全例メチル化状態であった。免疫組織化学的には11例で陽性であった。 培養細胞ではEBV感染によるDNAメチル化の亢進を一部で認め、我々が既に報告しているEBV関連胃癌での高メチル化状態を示唆する変化であった。しかし、蛋白発現には影響を見いだせず、他のプロモータ部位のDNAメチル化、あるいはメチル化以外の因子がEBV関連胃癌のMUC2,MUC5AC低発現に効いている可能性が考えられた。
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