骨髄異形成症候群(MDS)は、特異的位置を占める造血器腫瘍である。極めて多様な、病理、病態像、MDSの白血病転化にいたる経路を臨床病理学的に明らかにし、MDSの病型分類を再整理することを目的とした。 1)骨髄組織標本での、赤芽球の検索のため、胎児型ヘモグロビン(HbF)特異性の高いアミノ酸配列から合成ペプチドを作製し、特異抗体の樹立に成功した.その抗体の病理組織学的解析での有用性を明らかにした。 2)鑑別が極めて困難である、再生不良性貧血と低形成MDSを病理組織学的に分析し、赤芽球のHbF発現と、P53陽性所見とあわせ、鑑別診断が可能であることを明らかにした。 3)従来、髄外造血病変でHbFを発現する赤芽球の出現が指摘されていたが、我々の検討ではHbFが発現する赤芽球は髄外造血に観察されるが、同時に骨髄でも観察され、一種のstresser erythropoiesisに伴うことを明らかにした。 4)MDS症例における赤芽球のHbF発現、p53発現を検討した。MDSでは有意に赤芽球のHbF発現が認められ、p53+所見も有意に観察された。 5)MDSにおける赤芽球のHbF発現は、stress erythropoiesisと異なり、赤血球のHbF発現に反映しないことから、無効造血が貧血の原因であることを明らかにし、apoptosisの高頻度の関与を指摘した。 6)後方視的検討により、MDSの中で白血病化のリスクが高く、治療抵抗性である7番染色体異常を有する群を検討し、その初期病理像から、臨床的病態を推定できるパラメータの抽出、悪性化の機構の解明を明らかにした。 病理学的手法による骨髄解析により、従来の知見とは全く異なる上記の新たな情報を提供した。それらの所見による治療戦略を念頭においた細分類を構築することが今後の課題である。
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