研究概要 |
p15/p16がん抑制遺伝子の意義に関する研究:これまで酸化ストレス発がんの代表例と考えられる鉄キレート剤によるラット腎発がんモデルを使用して、その標的遺伝子がp15/P16がん抑制遺伝子であり、アレル欠損やプロモター領域のメチル化が主たる変化であることを見出した。今年度その変化がどの時期に起こるのかを検討し、実験開始後数週間の早期であることを見出した。この事実をヒト標本に応用するため、in situ hybridizationに関する諸条件の検討を行った。PCRで得られた数kbのプローブとTSA法を組み合わせて行ったが、まだ安定した結果は得られていない。一方、特異性は高いが高価なPNAプローブに関して、標本条件の検討をGAPDHのプローブで行ったところ、30年前のパラフィンブロックでも十分使用に耐えることが判明した。鉄トランスポーターの意義に関する研究:鉄の吸収機構に関して、5年前に初めて小腸上皮に存在する鉄トランスポーター(DMT1,NRAMP2)がクローニングされた。本研究においては、自然なかたちで吸収された過剰鉄が発がんなどのヒトの病態に関与するか調べるため、今年度トランスジェニック動物の作製を行った。まずラットDMT1(NRAMP2)をpCAGGS(Chicken beta-actin promoter)ベクターにクローニングし、トランスジェニック用ベクターを作製した。このベクターをC57B6とDBAのF1動物の卵にin jectし、同じくF1動物の子宮内に戻し、キメラ動物を作製した。ベクターの作製にあたっては、培養細胞COS7にtransient transfectionをすることにより、細胞内の鉄含有量が増加するかどうかをあらかじめ確認した。現在、キメラ動物が得られ、解析を進めている。
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