研究概要 |
予後不良の難治性リンパ腫であるマントルリンパ腫ではt(11;14)という特異的核型異常によるCyclin D1の過剰発現が確認されているが、腫瘍化における機能は未知である。Cyclin D1の機能を抑制して起こる変化を解析するために、当初抗cyclin D1モノクロナル抗体産生ハイブリドーマより得られるScFvをPTD(HIV-1 tat遺伝子由来のタンパク細胞内導入ドメイン)と融合させ導入することを目論んだが、TATはマントル腫細胞への導入効率が悪く実用面で問題があり、新しい導入システムの開発が必要となった。また、ScFvの使用は煩雑なためシステムの簡便化と考えCyclin D1の機能を阻害するp16癌抑制遺伝子の機能を回復する機能性p16ペプチドを導入するシステムの構築をまず目指した(マントル細胞腫では高頻度でp16の発現が消失)。結果、導入ペプチドの結合に有効な疎水性ポケットを有しかつ細胞内高浸透能を発揮する改良型ペプチド・トランスポータの開発とこれを利用したp16機能性ペプチドの導入による超効率的増殖抑制システムの確立に成功した。改良型ペプチド・トランスポータは既存のPTD-peptide(TAT, poly-Arg-fusion peptideなど)に比較すると約20-30倍増の驚異的な導入効率を発揮し、機能発揮に必要なペプチドの要求濃度を従来の1/100-1/50に軽減することができ、また99%以上の導入効率を実現、さらにprimary lymphoma cell新鮮材料を含めて、p16の発現を欠損した多種類の高悪性度白血病・リンパ腫細胞の増殖を著明に抑制した。関連研究成果は一部重要な関与を共有するものとしてEur.J.Immunol.Vol.33,p1-11,2003及びJ.Clin.Exp.Hematopathol.Vol.43,p21-27,2003に報告している。当Transporterは現在、特許申請を検討中である。また、以上の研究成果は必要とするデータを採り終えたので、論文を作成し分子標的治療関連分野を有する医科学誌に平成16年4月現在投稿中である。
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