研究概要 |
眼付属器、大腸、甲状腺、唾液腺におけるMALTリンパ腫例のAP12-MALT1の発現を検討した。その結果、眼付属器においては13%の症例において上記異常が見出され、一部大細胞型リンパ腫においても異常が検出された。このことは、従来報告がなかったことで、新規な発見である。また、免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成がPCRで検出されず、reactive hyperplasiaと診断された症例でも一例API2-MALT1の異常が検出された。このことは、非常に早期の病変でもnested, multiplex RT-PCR法では検出できることを示している。一部の症例はFISH法での検索をしており、nested, multiplex RT-PCR法と同様の結果が得られた。成果はModern Patholに掲載予定である。大腸においても1割強の症例に異常があり、この異常を見出した症例は陰性例に比べて、臨床病期がより高く、病変がより大きい傾向が認められた。この事実は、API2-MALT1がMALTリンパ腫の発生に関わるばかりでなく、よりaggressiveな増殖動態を示すことと関係していることを強く示唆しており、臨床的な取り扱いについて有用なデータである。これは、論文投稿中である。甲状腺、唾液腺については、検索症例にはAPI2-MALT1の異常を見出す症例は認められなかった。この2臓器は、自己免疫的機序による慢性炎症が起こりやすいことが知られており、API2-MALT1の関与は臓器により大きな差があることが示唆された。後者2臓器については、他の追加検索を続行しており、そのデータを加えて文献報告する計画である。SHP1の異常についても並行して検討しており、一部の成果はCancer Researchに掲載している。
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