本研究により、平成14年には眼付属器MALTリンパ腫においては13%の症例にAPI2-MALT1の異常が見出され、一部大細胞型リンパ腫においても異常が検出された。また、免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成がPCRで検出ない症例でもAPI2-MALT1の異常が検出さる症例が見出された。これは新規な発見であり、平成15年論文報告を行った。平成15年度は、さらに他臓器について検討した。その結果、大腸の47例のMALTリンパ腫を検索し、7例(15%)にこの異常を見出した。この異常を見出した症例と陰性例とを比較すると、患者年齢、腫瘍の深達度、多発性、肉眼形、国際予後因子には差がみられなかったが、臨床病期がより高く、病変がより大きい傾向があり、男性に多いという差が認められた。特に臨床病期は、陽性例がいずれもII期以上であるのに対して、陰性例では73%が臨床病期I期で対照的であった。この事実は、API2-MALT1がよりaggressiveな増殖動態を示すことと関係していることを示唆しており、治療法の選択の点で有用なデータである。これもModern Pathology誌上に報告したところである。甲状腺、唾液腺については、API2-MALT1の異常を見出さなかったが、検索する途上で唾液腺に濾胞性リンパ腫が頻発することを見出し、これについての研究を続行中である。SHP1はメチル化について検討し、MALTリンパ腫では82%の症例でこの異常を見出した。他のリンパ腫では大細胞型リンパ腫(93%)、マントル細胞リンパ腫(75%)、形質細胞腫(100%)、濾胞性リンパ腫(96%)であった。この異常は高率なため、陽性、陰性群での差は現在のところ検知されないが、発癌に関わる可能性を示差するものであった。これはLaboratory Investigation誌上に報告した。
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