ヒトの癌の多くはDNA ploidy異常を呈し、細胞1つあたりのゲノム総量が30%以上増加している。このようなグローバルなゲノム異常は癌の基本的な性質の一つと考えられるがそのような状態を引き起こすメカニズムについてはほとんど解明されていない。そこで、このようなゲノム総量異常の詳細についてcomparative genomic hybridization(CGH)法を用いて解析した。CGH法による調査は多種の癌について研究代表者の所属施設にデータがあり、また現在さらに解析進行中である。また、特殊な組織型をもつ大腸癌に着目し、この型の腫瘍ではDNA aneuploidyの場合高頻度に染色体18番短腕のコピー数異常がみられることを見いだし論文報告した。また、中心体過剰複製がploidy異常と関わりが深いという結果を得た研究に関与した。対象とする癌の種類によりDNA ploidyと関わりの深いゲノム異常が異なるというデータが蓄積され、課題を解決することは難しいと思われた。培養細胞に化学物質を作用させDNA ploidy異常を生じさせうるかどうか実験し課題解決のヒントを得ようと試み、その結果について現在投稿中である。なお、癌細胞の調査ではすでに多くのゲノム異常が獲得されていることが多く、目的のDNA ploidyを引き起こす鍵となる遺伝子の発見には前癌病変のゲノム異常調査が役に立つと思われ、前癌状態の病変についてゲノムコピー数異常を調査検討し報告準備中である。なおこれらデータは研究代表者の所属する施設の大学院生や研究者などの協力のもと得られたものである。
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