大腸癌の悪性度評価における細胞形質発現と遺伝子異常の関連

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570148
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 八尾 隆史 九州大学, 医学研究院, 助教授 (20243933)
• 研究分担者: 西山 憲一 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (80325456)
• キーワード: 大腸癌 / human gastric mucin / MUC2 / CD10 / 肝転移 / adenoma-carcinoma sequence / de novo / マイクロサテライト不安定性

研究概要

これまでの胃型(human gastric mucin)、腸型(MUC2,CD10)のマーカーを用いた形質発現研究で大腸癌の形質発現と悪性度の関連があることが示唆され、とくに小腸型(CD10発現)において静脈浸潤が高度であることが判明した。そして、肝転移を来した大腸癌においても小腸型(CD10発現)の頻度が高く(Pathology 2002)、肺転移を来した大腸癌でも小腸型(CD10発現)の頻度が高いことよりCD10発現が高悪性度の指標となることを報告した。さらにリンパ節転移を来した早期大腸癌においてもCD10発現の頻度が高いことより、早期大腸癌の悪性度評価の指標としてもCD10が有用であることが示された。
また、これまでの解析に加え大腸のさまざな上皮性腫瘍の形質発現のさらなる解析により形質からみた腫瘍の発育進展様式が推測された。管状型腺腫はほとんどは大腸型形質であったがそれ由来の癌では小腸型への形質転換が約半数でみられたが、絨毛型腫瘍では腺腫も癌も混合型がほとんどであり、腺腫の組織型の違いで形質発現が異なることが示された(Histopathology投稿中)。一方、adenoma-carcinoma sequenceによる発癌経路に属する隆起型早期癌の形質は管状腺腫と類似していたが、de novo発癌に属すると推察される非隆起型早期癌と2cm以下の進行癌では分類不能の割合が多く、発癌経路により癌の形質発現が異なることが示唆された。
形質発現と遺伝子異常の関連に関しては、マイクロサテライト不安定性(MSI)のマーカーであるMSH2やMLH1の免疫染色により絨毛性腫瘍などの混合型形質の腫瘍ではMSIの異常が示唆されたので、現在腫瘍のパラフィン標本からDNAを抽出しMSIの解析を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Yao T, Takata M, Tsutsumi S, et al.: "Phenotypic expression of gastrointestinal differentiation markers in colorectal adenocarcinomas with liver metastasis"Pathology. 34(6). 556-560 (2002)
• [文献書誌] Yao T, Kajiwara M, Kuroiwa S, et al.: "Malignant transformation of gastric hyperplastic polyps : alteration of phenotypes, proliferative activity, and p53 expression"Human Pathology. 33(10). 1016-1022 (2002)
• [文献書誌] Utsunomiya T, Yao T, Tamiya S, et al.: "Intracellular distribution of intermediate filaments in vimentin-positive gastric carcinomas : confocal laser scaning microscopy using formalin-fixed paraffin-embedded specimens"Pathol Res Pract. 198(2). 69-76 (2002)
• [文献書誌] Nishiyama K, Yao T, Yonemasu H, et al.: "Overexpression of p53 protein and point mutation of K-ras genes in primary carcinoma of the small intestine"Oncology Reports. 9(2). 293-300 (2002)
• [文献書誌] Kozuki T, Yao T, Nakamura S, et al.: "Differences in p53 and cadherin-catenin complex expression between histological subtypes in diffusely infiltrating gastric carcinoma"Histopathology. 41(1). 56-64 (2002)