研究概要 |
Lipoprotein lipase(LPL)の肥満における機能解明を目的に,ヒトLPLを過剰発現する遺伝子導入ウサギ(Tg)を用いて実験を行った。 LPL Tgウサギに10%高脂肪食を16週間負荷し,体重,血漿脂質の変化,脂肪の沈着,耐糖能等について検討を行った。 10%高脂肪食の16週間負荷後の体重増加率に有意差は認められなかったが,LPL Tgウサギで少ない傾向を示した。MRI検査では,LPL Tgウサギにおいて腹腔内の脂肪の沈着量が少ないことが観察された。実際に解剖して脂肪重量を測定したところ,LPL Tgウサギで対照(Non-Tg)に比べ有意に低値を示した。血漿脂質では,LPL TgウサギのTrigryceride(TG)の値は対照と比較して有意に低く約1/5であった。高脂肪食負荷後,対照群ではTG値は上昇,Total cholesterol(TC), High density lipoprotein cholesterol(HDL-C)値は低下した。いっぽう,LPL Tgウサギでは,高脂肪食負荷前と比較して有意な差は認められなかった。さらに,高脂肪食負荷後,血中のグルコース値およびインスリン値はNon-Tgでそれぞれ有意に増加したが,LPL Tgウサギでは高脂肪食負荷前の値とほぼ同様であった。さらに,高脂肪食負荷16週目において実施した糖負荷試験では,LPL Tgウサギの糖負荷後の血中グルコース値,インスリン値,遊離脂肪酸(FFA)の曲線下面積はNon-Tgと比べて有意に低い値を示した。LPL Tgウサギの病理学的観察では,LPL Tgウサギの腹腔内脂肪細胞は対照群と比べて細胞の大きさが小さいこと,肝臓ではTGの沈着によると考えられる脂肪肝を生じていることが観察された。以上のようにLPL Tgウサギを用いた実験から,LPLは高脂肪食負荷による脂肪沈着を抑制すること,さらには肥満に伴って出現するインスリン抵抗性など糖代謝異常を改善することが示唆された。
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