研究概要 |
1.前年度の検討により、HIV由来Tat蛋白をClass II transactivator(CIITA)遺伝子のN末端に融合することにより作製したTat-CIITAがin vitroにおいてヒト培養癌細胞内に移行しMHCを誘導することが明らかとなったため、マウス培養癌細胞においても同様の現象が起きるか検討した結果、マウス培養癌細胞においてもMHCを誘導しうることが明らかとなった。しかしTat-CIITA蛋白は大腸菌内で封入体を形成してしまうため、種々の方法を用いても大量に精製分取することが困難であり、動物実験系にこの組み換え蛋白を使用することができなかった。Plasmid vectorを用いてCIITAを安定的に強制発現させたマウス癌細胞は同系宿主に対して腫瘍免疫反応を惹起できることが判明したことから、この蛋白精製に関する問題に関しては今後も検討していく所存である。 2.次に、human CIITA(hCIITA)およびmouse CIITA(mCIITA)遺伝子下流にclass II主要組織合抗原(MHC)に呈示されるペプチド抗原のMHC結合モチーフに合致した結核菌(Tb)由来オリゴペプチドをコードするnulceotide sequenceをfurin切断モチーフを挟んで挿入した発現ベクターを作製した(pZeo-hCIITA-furin-Tb、pZeo-mCIITA-furin-Tb)。更にCIITA、TbにそれぞれHemaggulutinin tag(HA)、6x Histidine tag(His)を付加した発現ベクターを作製した(pZeo-hCIITA-HA-furin-Tb-His、pZeo-mCIIA-HA-furin-Tb-His)。これらの発現ベクターをヒト肺癌培養細胞TKB5に導入してその作動を確認した。 3.次に、これらの発現ベクターをA/Jマウス由来神経芽細胞腫(C1300)、C3H/HeNマウス由来乳癌株(MM102)、C57BL/6マウス由来肺癌株(Lewis)に導入し、安定発現株の作製を試みた。その結果、C1300-empty, C1300-hCIITA, MM102-empty, MM102-hCIITA, MM102-hCIITA-HA-furin-Tb-His, Lewis-empty, Lewis-hCIITA, Lewis-hCIITA-HA-furin-Tb-Hisが得られた。このうちMHC haplotypeにマッチした結核菌由来抗原ペプチドを発現しているLewis-hCIITA-HA-furin-Tb-Hisは、同系宿主であるC57BL/6マウスに対して強い腫瘍拒絶反応を惹起できることが明らかとなった。
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