研究概要 |
本研究課題では2年間の研究期間内肝炎・肝硬変患者における肝の分裂寿命からみた,肝不全の発生機構を解明し,肝不全治療の新たな治療戦略を立脚することを目的に研究を進め,平成14年度分として以下の成果を得た. (1)テロメラーゼ活性の測定法:生体内分子間相互作用解析装置(Biacore 3000,BIACORE, Uppsal, Sweden)を用いたテロメラーゼ活性の定量的評価法,telomeric repeat elongation (TRE) assayを開発した.本法は従来型のPCR法を応用した方法に比較して,正確に迅速な定量が可能であった. (2)エストロゲンのテロメラーゼ誘導による,肝細胞分裂寿命の延長に関する基礎的検討:ヒト肝培養細胞株(Hc-cells, hNheps, WRL)を用いて,エストロゲンの接触実験を行った.テロメラーゼ活性は2-4倍に上昇した.テロメラーゼ活性のの上昇は,hTRET(human telomerase reverse transcriptase)の発現増強によるものであることが明らかとなった.更にエストロゲンの長期添加実験では,添加群でテロメ長の短縮が有意に抑制され,senescence-associated beta-galactosidase陽性細胞比率も減少していた.さらに四塩化炭素肝硬変モデルラットを作製しテロメア長を計測したところ,エストロゲン投与群で有意にテロメア長短縮が抑制されていた. 肝細胞の分裂寿命は外因性のエストロゲン投与により延長させることが可能であり,次年度以降はは肝幹細胞の分離を行い,この細胞の分裂寿命の評価と分裂寿命延長法に関する基礎的検討を行う.
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