研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)の癌化における間質細胞の遺伝子不安定性・変異を検索すべく、1、その対照として特発性大腸癌40症例の癌病変と非癌大腸粘膜を選び、薄切切片上におけるmicrodissection法によって上皮細胞と間質細胞とを分離採取し、DNA抽出・PCR・SSCP法によりmicrosatellite instability(MSI)を検索した。その結果、癌組織では上皮、間質細胞にMSIが34,41%に認められ、上皮細胞では癌細胞の分化、Dukes stageの進行に相関していたが、間質細胞では高分化腺癌(54%)、Dukes A(55%)と高く、逆の相関であった。以上より、大腸癌発生において間質細胞の関与を含む新たなる発癌機構の存在が示唆された。続いて、2、UCに伴う異型病変、癌病変の解析を行い、上皮細胞のMSIないしLOHは再生上皮、異型病変、癌と徐々に上昇していたが、間質細胞では再生上皮の段階から既に高率(約50%)に認められた。NCI推奨マーカーよりも17番染色体およびその他の癌抑制遺伝子がコードされているとされる、3,7,9,13,18番染色体のマーカーにMSI, LOHが高率に出現することが判明した。3、管状腺腫ではMSI, LOHともに陽性例は低頻度であることが明らかになった。 以上から、UCにおける腫瘍性病変では、間質細胞の遺伝子不安定性が上皮細胞の癌化につよく関連していることが示された。さらにUCでは癌抑制遺伝子をコードしている3,7,9,13,17,18番染色体上のマーカーにMSI、 LOHが生じやすいことが示され、炎症に伴う酸化的ストレスによるMSI, LOH出現に特異性があることが判明した。
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