(1)脳内出血血管について、脳外科手術中に出血源を同定して止血後、破裂血管を切除し検索するる我々の方法では、50余例の全例が急性解離であり、微小動脈瘤は未だ遭遇していない。 (2)典型的な血管を連続切片化し、コンピューターによる弾性線維の三次元立体再構築を行ったところ、血管破裂部位はもちろん、非破裂部位に於いても、弾性線維の同心円的な多層化を認めた。最大10層まで断裂している部位もあった。このことは、その他の症例でも同じであり、ある長さで、血管の弾性線維が同心円上に何層にも裂けていることであり、これが病態の本質的な部分と考えられた。 (3)法医学領域でしばしば問題になる、外傷と脳動脈急性解離の因果関係(どちらが原因かも含めて)につき、典型的な症例があったので三次元立体再構築を解析した。 頭蓋底骨折に合併した内頸動脈の非破裂・急性解離であり、力学的にも頭蓋底骨折を生じた剪断力に合致する血管壁内にとどまる解離であった。しかし外弾性板や外膜は保たれていたが、内弾性板が裂けて中膜平滑筋に解離が及んでいた。さらに、この症例では、非破裂部位の内弾性板が、上記のように多層化した断裂を示した。そのことを我々は先に血管破裂には至らない程度の内弾性板の病気が存在し、そこに外傷が加わった、と理解した。従ってこの問題は、力学的に合理的な外傷であることの立証の他に、血管の自然破裂には至らなくても、内弾性板の病的変化が生じていないかどうかが重要であると考えられた。
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