研究概要 |
【対象と方法】2003年1月から2005年4月までに発症した脳内出血のうち脳外科的治療対象の45例につき手術の際に出血血管を同定。止血結紮後切除した動脈をホルマリン固定パラフィン包埋し、15μm毎の連続切片化し弾性染色を施して光顕。一部は三次元立体再構築を試みた。動脈解離の基準は古典的なShennan(1934)の定義を厳密に適応し、かつ動脈が破裂している(脳内出血の原因になっている)ものに限定した。【結果】脳内出血部位は被殻27例、皮質下11例、視床2例、小脳4例、脳幹部1例であった。45例の穿通枝動脈のうち単なる血腫塊などの不適切検体3例を除く42例の、年齢は65.4+/-10.2SD歳、検索血管の太さは外膜間で直径50-500μm。この42例全例に急性脳動脈解離を115カ所を認めた。動脈硬化も中膜壊死も無かった。血腫の大きさと、発症から血管切除・固定までの時間との要素があるのか、加えて非破裂部位の動脈の内弾性板は不均等に肥厚し、断裂したり、あたかも長軸方向と垂直な断面では、同心円状の多層性離解を示したが中膜平滑筋には著変は無かった。多発する症例は、太い血管から細い血管が分岐した15-30μmあたりで細い血管が急性解離と血管破裂を示す傾向にあった。また1例は直径700μmの局所的膨隆を示し、血管壁はcollagen線維から成り立ち(外膜?)、その中には内皮細胞も、血管平滑筋も無く血管内血栓化を認めない動脈を1例認めた。【考察】以上より、脳内出血は穿通枝動脈の急性解離によって生じること、急性解離は多発していることがわかった。先の下記報告1)よりも超薄連続切片化したことで偽陰性例を減らすことができたと考える。直径700μmの局所的膨隆は、微小動脈瘤に相当する可能性があり、今後の解析課題にしたい。また急性解離が起きている動脈には非破裂部位にも内弾性板の病的変化を認めた点で、この脳動脈解離の病態は弾性線維の病気と概念化できると考えられた。【結論】脳内出血は穿通枝脳動脈の急性解離(多発性)によって発症することがわかった。その基礎には弾性線維の病態が深く関与していることが示唆された。【参考文献】1)J Neurosurg 93:859-862,2000.
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