研究概要 |
本年度は以下の成果を得た. 1.サンプルの採取と化生の分類:胃癌により外科的切除された70例の新鮮胃非腫瘍部幽門部粘膜より,腺管分離法を用いて幽門部腺管を単離後,化生(-),胃腸混合型化生,腸単独型化生に選別した.各タイプにつき約20症例ごとに-20℃でストックした.同時に隣接部胃粘膜の組織切片を作製し,化生の有無とタイプのチェックを行った. 2.分離腺管からのDNA採取とマイクロサテライトマーカーを用いたreplication error (RER)解析:分離した新鮮な胃粘膜腺管は少量であるため,抽出されるDNAもごく少量であり,複数のマイクロサテライトマーカーを対象とするPCRが手技的に困難な場合がしばしばあった.現在もサンプルの採取と化生のタイプによる選別を継続している. 3.腫瘍組織からのDNA採取とマイクロサテライトマーカーを用いたRER解析:進行癌20症例では腫瘍組織の採取を同時に行い,病理組織切片を作成後,胃型,腸型の細胞分化マーカーを用いた染色により腫瘍の形質発現(胃型,胃腸混合型,腸型)を検討するとともに,免疫組織化学的にミスマッチ修復遺伝子hMLH1の発現を検討した.同時に新鮮腫瘍組織からDNAを抽出,RER解析を施行しmicrosatellite instability (MSI)と腫瘍の細胞分化との関係を調べた. 4.胃癌の形質発現とMSI, hMLH1発現との関係:MSIを検索した20例中MSI-high症例は5例であり,すべてhMLH1発現が陰性,形質発現では胃型2例,胃腸混合型0例,腸型2例,分類不能型1例であった.今回検索した20例においては,明らかな関連性は見出されなかった. 5.来年度は,新たに分離した化生腺管を用いて化生のタイプとMSIとの関連性を検討する.さらに隣接部分の組織切片中の化生腺管を対象に,マイクロダイセクション法を施行し同様の検索を進める.
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