研究概要 |
本研究は成体肝臓に存在する幹細胞様細胞を用い、Laser Capture Microdissection、RNA増幅(T7 Adapter Ligation PCR Amplification, TALPAT法)とSupression Subtractive Hybrydization (SSH)法によってその分化特異的発現遺伝子を網羅的に探索することを可能にし、それらの遺伝子解析から肝幹細胞分化の分化機序を模索することを目的とする。本研究では成体肝幹細胞様細胞株培養系(Kano et al.,In Vitro Cell. Dev. Biol.,2004)を用いた解析を試みた。肝実質細胞と成体肝幹細胞様細胞株培養系の幹細胞様コロニーから採取し、TALPAT法で増幅した各mRNAの間でSSHを行い幹細胞様細胞特異的発現遺伝子が増幅できた。増幅した遺伝子に対し、Differential Screenigを行い39個の幹細胞様細胞差異的発現遺伝子を得て配列解析し、29種の遺伝子配列を明らかにした。さらにSSHのサンプル母集団であるTALPAT産物をプローブに用いて、reverse Northern Blottingを行い、幹細胞様コロニーでの差異的発現を確認した。その結果から幹細胞様コロニーでの発現が高く、実質細胞との発現差が顕著である4-5遺伝子を選択して、肝幹細胞様細胞を分離する画分である肝非実質細胞の第一継代目の凝集塊とヒト肝がん細胞株(Ishiyama et al., Cancer Sci., 2003)での発現をRT-FCR法で解析した。その結果第一継代目の凝集塊での発現が確認されこの画分中に幹細胞様細胞が高頻度で存在することが示唆された。またヒト肝がん細胞株で株の性質による発現差異が確認でき、これらの遺伝子が肝がんのマーカー遺伝子として発症機構研究や診断に利用できる可能性が示唆された。
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