本研究では、ヒトREV蛋白の細胞内局在の解析と、紫外線によるDNA障害が及ぼす影響について検討した。GFP融合REV1、REV3、REV7蛋白をそれぞれ発現させる発現ベクターを作成し、COS7細胞に導入することにより細胞内でそれぞれの蛋白を発現させ、蛍光顕微鏡にてそれらの蛋白の細胞内局在を観察した。その結果、REV1蛋白は核内に存在し、ある割合で数十個の小顆粒状のfocusを形成していること、REV7蛋白は大部分が核内に、一部が細胞質に存在し、focus形成は伴わないことが判明、REV3蛋白は核内に存在しているが、発現が悪いため詳細は不明であった。そこで、REV1にて特異的に認められたfocus形成に着目し、紫外線照射によるDNA損傷との関係を詳細に検討した。GFP融合REV1蛋白をCOS7細胞で強制発現させ、その細胞に紫外線照射によりDNA損傷を与えてREV1のfocus形成の変化を観察した。紫外線照射しない状態で約3%の細胞でfocus形成が認められたが、8J/m^2の紫外線照射8時間後には約25%の細胞でfocus形成が認められた。また、このfocus形成率は、紫外線量に依存して増加した。REV1のfocusはDNA複製forkの指標であるPCNAと共局在を示し、またBrdUを用いた解析により多くのfocusはS期で形成されていることが判明した。また損傷乗り越え型DNA複製に関与する他の蛋白Polκ、、Polηとの共局在も確認された。これらの結果より、REV1のfocus形成は紫外線照射により誘導され、しかもS期のDNA合成と関係している可能性が示唆された。REV1の種々のdeletion mutantを用いて、REV1のfocus形成に重要なドメインを決定したところ、REV1のC末端部分がfocus形成に重要であることが判明した。Polκ、Polη、REV7との結合ドメインの存在する部位であり、REV1がこれらの蛋白の機能に関与している可能性が示唆された。今後は他のDNA損傷誘発薬剤を用いた時のfocus形成についての検討、また、突然変異導入率についての検討を行う予定である。
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