クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や狂牛病をはじめとするプリオン病は、神経細胞表面に発現する糖蛋白の一種であるプリオン蛋白PrPC)からできた異常蛋白分解抵抗性プリオン蛋白(異常型プリオン;PrPScが病原因子の実体であると考えられているが、PrPScの蓄積は、脳・脊髄以外では、PrP遺伝子発現が低いか検出限度以下の唾液腺や脾臓などで多く、逆に、PrP遺伝子発現が高く、実際に蛋白発現も認められる心臓、睾丸、腎では検出できないという奇妙な現象がある。しかし、近年、CJDの患者尿中に腎由来ではないがPrPScが存在するという報告がなされている。そこで、この事を確認すると共に何故、腎由来のPrPScが同定出来ないかを検討した。まず、腎におけるPrPの局在をin situ hybridization法と免疫組織化学法を用いて行った。その結果、PrP mRNAの発現は腎近位尿細管に発現しているが、蛋白自体はWestern blotで僅かではあるが存在しているにもかかわらず、明確な局在を同定することは出来なかった。一方、尿中においてはPrPは同定できるもののPrPScの存在は報告と異なって同定出来なかった。このことは、尿中に存在する免疫グロブリンの存在と関連しているようであるが、それについては検討中である。また、腎においてPrPCからPrPScへの構造変換を抑制する何等かの抗プリオン活性因子が存在していることも示唆されるため、現在、正常腎と感染腎との間でsubtraction法を用いて検討している。
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