研究概要 |
本研究の目的は、難治性大腸炎実験モデルの分子病態を解明し、その発症機序にかなった新規治療薬を探索することである。特にアポトーシス分子機構に注目して、1)潰瘍性大腸炎、および2)放射腺誘発大腸炎の発症機序を検討し、免疫系及び造血系に作用する液性因子としてクローニングされたサイトカイン、インターロイキン-11を始めとした種々の治療薬について有効性を評価することである。 研究実績として、 1)高血圧自然発症ラットについて大腸粘膜上皮内アポトーシスを評価するためにX線全身照射を行い交感神経亢進状態における放射線感受性を検討した。 2)放射線大腸炎モデルとしてラット大腸に開腹下にX線骨盤内限局照射を行った。 3)潰瘍性大腸炎モデルとしてDSS腸炎を作成し、潰瘍の進展と治癒過程について検討した。 4)ヒト大腸炎生検における上皮基底膜直下の粘膜内アポトーシス(核塵)と炎症について検討した。 5)ヒトGVHD症例皮膚生検におけるアポトーシス及びドナー由来ケラチノサイトの同定を行った。 6)分子病理学的検討では、(1)粘膜上皮の傷害、潰瘍、組織学的進達度についての評価、(2)大腸粘膜上皮内アポトーシスの出現について、TUNEL法及び画像処理装置での局在及び数量的評価、(3)Caspase-3, Ki-67, ED1について免疫染色、Western blott法を行った。 以上、交感神経亢進状態では放射線感受性が増加すること、スクラルファートが放射線誘発アポトーシスを抑制し、大腸stem cellを保護することを報告した。放射線大腸炎モデルではインターロイキン-11が抑制効果を持つことを報告した。DSS腸炎モデルでは核塵が増加し、インターロイキン-11はその発現を抑制した。Eosinophil cationic protein抗体投与では大腸上皮の再生が促進された。ヒトGVHD症例皮膚生検ではドナー由来keratinocyteが同定され、ドナー由来colonocyteの同定も期待された。以上、我々はここに難治性大腸炎においてアポトーシス機構異常を提唱した。また、大腸炎治療においてアポトーシス機構への介入が効果をあげることが証明されるだろう。
|