研究概要 |
クラスIおよびクラスI拘束性抗原の研究と比較すると、クラスII拘束性抗原の研究は遅れている(Ikeda, H)。癌患者血清には、癌種を問わず腫瘍に反応する抗体の存在が示され、クラスII拘束性CD4細胞の重要性が示唆される(Nabeta, Yら,Ito, Kら)。本研究では、グリオブラストーマのCIITA(Class II transactivator)発現の分子機構の解明を目指した。 グリオブラストーマ12細胞株におけるクラスIIの発現をFacsで、クラスII発現のマスターレギュレーターであるCIITAの発現をRT-PCRにて解析した。この結果,1,グリオブラストーマはクラスIIの発現に関して3群に分類され,この違いはCIITA遺伝子の4つのプロモーターの使われ方の違いによること、2,IFN-γによりHLA-DRの発現誘導する12細胞株中8例(type2)におけるCIITAの発現の検討により、これらの細胞株がCIITAプロモーターIII, IVを用いていること、3,正常astrocyteと11手術材料中9例でも同様の表現型が示されたことより、type2が典型的なグリオブラストーマのCIITA-クラスII発現系と考えられ、さらに4,クラスIIを構成的に発現するtype1(2/12)では、CIITAプロモーター-エンハンサー領域の広範なヒストンアセチル化による転写亢進が示された(Takamura, Yら)。 5,同様な解析を頭頸部扁平上皮癌(Kanaseki, Tら)や白血病細胞株(Morimoto, Yら)でも進めたが,グリオブラストーマのCIITA発現機構が他とは異なる特異な存在であることが示された。 これらの結果を踏まえ,グリオブラストーマを積極的に抗原提示細胞として用いてCD4陽性T細胞を誘導し、グリオブラストーマ特異抗原の同定を目指したい。
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