研究概要 |
血管内皮細胞のタイト結合は血液組織関門に必須であり、その破綻は脳浮腫や癌の血管外脱出等さまざまな病態を引き起こす。近年多くのタイト結合構成分子が同定され、血管内皮には膜貫通分子であるclaudin-1,claudin-5,occludinや、膜裏打ち分子であるZO-1,ZO-2が発現することが明らかになっている。しかし、血液組織関門の形成や制御の分子メカニズムは未だ不明である。我々は以前、ブタ大脳皮質毛細血管内皮細胞の分離培養法を確立し、アストロサイトから分泌される神経栄養因子GDNFがタイト結合のバリア機能を亢進させることを明らかにした。今回我々は、血管内皮細胞のタイト結合機能を亢進することが知られているcyclic AMP(cAMP)が、プロテインキナーゼA(PKA)非依存性にclaudin-5の発現量を、PKA依存性にclaudin-5のリン酸化を有意に増加させることを明らかにした(第42回米国細胞生物学会)。また、タイト結合を欠如するラット肺血管内皮(RLE)細胞株において、遺伝子発現の時間的・量的調節が可能なコンデイショナルシステムを樹立した。この培養系を用いて、claudin-1やclaudin-5の発現誘導によって、機能的なタイト結合が再構成されることを明らかにした。さらにclaudin-1,claudin-5のC末細胞内ドメインに、それぞれMAPキナーゼ、PKAのリン酸化候補部位を見い出し、この部位に点変異を加えたclaudin-1,claudin-5の発現を誘導できるRLE細胞株を樹立した。その結果、MAPキナーゼはclaudin-1タンパクを標的分子としてタイト結合のバリア機能を増強し、claudin-1配列内のThr^<203>がTriton-X100非可溶性claudin-1の量やタイト結合機能に寄与していることを明らかにした。
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