Caspin/PEDF/EPC-1による血管新生抑制作用の分子機序を解明すべく、免疫組織化学的解析とin situハイブリダイゼーションン法、ならびにin vitro実験モデルを用いて、軟骨分化におけるcaspinの分子動態の検討を行った。 1.胎発生期マウス組織における免疫組織染色では、caspinは軟骨組織形成前の未分化間葉系細胞で特異的に発現し、軟骨が形成される部位のマトリックスで局所的に蓄積される。その後、内軟骨骨化に伴って消失するものの、骨外縁に沿って再び強く発現し、同部マトリックスで局所的に集積することが明らかにされた。 2.in situハイブリダイゼーションン法でも免疫組織染色の結果とよく一致していた。 3.マウス未分化培養細胞株ATDC5でのウエスタン法とRT-PCR法による解析では、insulin添加による軟骨分化誘導前には発現を認めないアグリカンやX型コラーゲン、ならびにVEGFの発現は分化誘導とともに増大し、さらに肥大軟骨細胞への分化時期に相当する分化誘導7日目以降もこれらの分子の発現は増大しつづけるのとは対照的にcaspinの発現は急激に減弱した。 これらの解析結果から、無血管組織である軟骨の組織形成過程や内軟骨骨化における血管侵入抵抗性から許容性へのスイッチングの分子機序には、生理的な血管新生促成因子と抑制因子の発現バランスによる巧妙な調節機序が存在し、caspinが同機序の重要な抑制因子として関与していることが示唆された。
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