(目的) ipriflavone(以下Ipr)は、isoflavone誘導体で骨吸収系と骨形成系とに作用する経口摂取可能な骨粗鬆症治療薬として使用されている。またIprの構造類似体であるgenisteinやquercetin、更にはIprの代謝産物であるdaidzeinには抗腫瘍効果が報告されている。以上の事から、Iprは骨破壊抑制と抗腫瘍効果により癌の溶骨性骨転移を抑制する可能性がある。我々は、ヒト乳癌細胞(MDA-231細胞)を用いたヌードマウスの溶骨性骨転移の実験系を用いてIprの効果を検討した。 (方法) MDA細胞をヌードマウスの左心室に注入し、翌日からまたは2週間後からIprを連日経口投与した。そのマウスのX線写真を撮り溶骨性転移巣の数、面積を検討するとともに溶骨性骨転移巣でのmitotic indexを検討した。更に、溶骨性転移巣での癌、骨境界面単位当たりの破骨細胞数を調べた。又Iprのin vitro及びin vivoでのMDA細胞の増殖に及ぼす効果、MDA細胞の増殖を促進するEGFによるEGF受容体のチロシンリン酸化に及ぼす効果を調べた。 (結果) Iprは、投与開始時期とは無関係にMDA細胞の溶骨性骨転移を抑制するとともに溶骨性骨転移巣でのmitotic indexを減少させた。また、Iprは癌、骨境界面単位長さ当たりの破骨細胞数を減少させた。更に、Iprはin vitro及びin vivoでのMDA細胞の増殖を抑制し、EGFによるEGF受容体のチロシンリン酸化を抑制した。 (考察) 以上の様に、Iprはin vivoで乳癌細胞の増殖抑制、破骨細胞数の減少作用を示し乳癌細胞による溶骨を抑制したので、Iprは乳癌の溶骨性骨転移治療に有用であると推測される。
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