【目的】マンソン住血吸虫症はマンソン住血吸虫(S.mansoni)感染により慢性に進行する疾患である。門脈に寄生した成虫の産卵した虫卵が肝臓の毛細血管に栓塞すると虫卵を中心とした肉芽腫が形成され、最終的には住血吸虫性肝硬変にまで進行することがある。虫卵誘発肝肉芽腫形成には虫卵周囲部に最初に浸潤してくる好中球およびその産生するサイトカインが重要な役割を担っていると考えられる。そこで、その役割を明らかにするために、S.mansoni感受性といわれているBALB/cマウスを用いて好中球枯渇状態における虫卵誘発肝肉芽腫形成について検討した。 【方法】上記マウスに60隻のS.mansoniセルカリアを腹腔投与により感染させる。その直前あるいは虫卵排出直前(感染7週目)に、マウス好中球を選択的に枯渇させる単クローン抗体RB6-8C5を投与し、好中球を枯渇させた。正常ラットIgGを投与群をコントロールとした。肝臓の標本作製は感染8週目に、寄生成虫数および虫卵数は感染9週目に検便により算出した。炎症性サイトカインとしてTNF-αの産生を肝臓組織切片において免疫組織化学的に解析した。 【結果と考察】感染直前あるいは虫卵排出直前に抗体により好中球を枯渇したマウスで、コントロール群と比較して回収された成虫数および虫卵産出数、肝肉芽腫の大きさ、肝肉芽腫に浸潤する細胞種、その部位でのTNF-αの産生に差異は認められなかった。感染前に抗体投与した群の末梢血好中球の割合は投与3日目まではコントロール41%に対し1%と激減しているがその後徐久に増加し、感染8週目の肝肉芽腫内の浸潤好中球数はコントロールと差がなくなっている。また、虫卵排出直前抗体投与群でも肝肉芽腫内の浸潤好中球数はコントロール群6.4%に対し1.2%存在し、好中球の枯渇が十分ではなかった可能性がある。今後完全な好中球枯渇のための抗体投与の期間、量などのさらなる検討が必要である。
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