研究概要 |
従来のフィリピンにおける調査では、日本住血吸虫症にみられる肝線維化の病態評価の為に、腹部超音波検査と並んで、プロコラーゲン-III-ペプタイド(P-III-P)やIV型コラーゲン、胆汁酸などの血清肝線維化マーカーも有用であった。また、中国における調査では、肝線維化が進行した例を中心にヒアルロン酸の有用性も報告されている。 そこで今回は、フィリピン、レイテ島のSchistosomiasis Research & Control Hospitalの受診者を対象として、糞便中の虫卵数(EPG : eggs per gram)や超音波検査所見と、種々の肝線維化マーカーとの関係について検討した。調査した虫卵陽性者177名のうち、約70%の例で、P-III-PもしくはIV型コラーゲンが高値を示した。特に20才未満の例では、感染例の約90%で基準値より高くなった。一方、ヒアルロン酸が高値を示した例は、虫卵陽性者の約20%にとどまった。Sensitivity, Specificityは、P-III-PもしくはIV型コラーゲンが高値を示した例では、各々70%程度となった。また、各々の肝線維化マーカーの値と肝超音波所見の間には、特に相関はみられなかった。EPGや年齢との関連では、高齢者以外にEPGの多い若年者でも、進行した肝線維化を示す網目状パターンががみられた。 近年、集団治療の進捗によって、進行した肝線維化を示す例は減少しており、ヒアルロン酸よりも、P-III-P・IV型コラーゲンといった血清マーカーが、日本住血吸虫症の病態を早期から評価するのに適していると考えられた。ただ、集団治療から漏れた群では、若年者であっても、進行した肝線維化がみられるので、今後の対策として集団治療への参加を促進することが大切と思われた。
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