日本住血吸虫症の肝線維化の評価に際し、従来から腹部超音波が利用されることが多いが、国際的な診断基準の作成は、他の住血吸虫症に比して遅れている。また、超音波検査所見と並んで、幾つかの血清線維化マーカーについても、その有用性が指摘されている。 本研究においては、アジアにおける住血吸虫症研究の国際的ネットワーク: Regional Network on Asian Schistosomiasis(RNAS)に参加・協力することによって、日本住血吸虫症の超音波所見の国際的診断基準の作成を試みた。また、より病態変化に即した診断基準とする為、フィリピン、レイテ島のSchistosomiasis Research & Control Hospitalの受診者を対象として、感染強度の指標である糞便中の虫卵数(EPG : Eggs Per gram)や超音波検査所見と、種々の肝線維化血清マーカーとの関連について検討した。超音波検査やX線CT検査でみられる典型的な網目状パターンの意義については、その病理組織学的な意味も含めてよくわかっていない。今回、若年者では、EPGが高い例で典型的網目状パターンがみられることが多かったが、高齢者においては、特に相関はみられなかった。肝臓の血清線維化マーカーについては、虫卵陽性者177名のうち、約70%の例でプロコラーゲン-III-ペプチド(P-III-P)もしくは、IV型コラーゲンが高値を示した。特に20才未満の例では、感染例の90%以上で基準値より高くなった。一方、従来中国の浸淫地で優れた血清肝線維化マーカーとして報告されてきたヒアルロン酸については、特に相関がみられなかった。
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