ミャンマーおよびインドネシアのマラリア野外調査で得られた新型四日熱および新型卵形マラリア原虫の野性株を用いて、SSUrRNA、チトクロームb、システインプロテアーゼ遺伝子などの遺伝子解析を行い、従来型の遺伝子配列と比較検討した。また、得られた野性株を用いて、人工培養を試みた。 (1)新型卵形マラリア原虫のSSUrRNA遺伝子を解析し従来型と新型の両者を比較した結果、明らかに両者は異なっていた。従来型はこれまでに報告されている卵形マラリアの標準株とされているNigerian-1株の遺伝子配列と極めて類似していた。 (2)システインプロテアーゼ遺伝子では、両新型原虫ともに従来型のUganda-1株およびNigerian-1株と比較した結果、共に遺伝子配列が異なっていた。 (3)新型卵形マラリア原虫のオーキネート表面抗原遺伝子も従来型のNigerian-I株と比較した結果、従来型の遺伝子とは全く異なっていた。 (4)チトクロームb遺伝子では、卵形マラリアではHarding株についてのみ報告されており、これと比較した結果、アミノ酸置換は2ヶ所に認められた。新型四日熱マラリア原虫も従来型のUganda-1株と異なっていたが、新型2種類間では相違が認められなかった。 (5)新型四日熱および卵形マラリア原虫を、通常用いられているRPMI-1640培地にグルコースおよび20%ヒト血清を添加した特殊培地を用いて、キャンドルジャー法による人工培養を試みた。培養後24-48時間で幼弱栄養期からシゾント期に発育したが、シゾントは成熟過程で異常形態を示し、新しいメロゾイトの形成は認められなかった。
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