ECF-Lは、新しい好酸球游走性因子として最近当研究室で遺伝子クローニングに成功したサイトカインである。このサイトカインは日本住血吸虫感染マウスの肝臓内に虫卵結節形成期に産生される好酸球游走性因子として研究が始められたが、好酸球増多を引き起こすMesocestoides cortなどの寄生虫感染でもその産生が増加することが明らかになった。今回の研究は、このサイトカインの役割の解明をさらに明らかにするために、免役組織化学による局在の解析および日本住血吸虫、メコン住血吸虫感染における産生の解析をおこない、病理変化に果たす役割を検討した。 FITC標識抗ECF-L抗体を用いて、Mesocestoides cort感染マウスの肝臓切片を染色すると虫体周囲に陽性細胞が多数観察された。また、この陽性細胞の多くはナフトール染色でも染色された。Mesocestoides cort感染マウスの骨髄塗沫標本を用いてECF-L陽性細胞の核の形状を観察すると、環状核を持った未熟な好酸球か最も強く染色された。好中球も弱い染色性が見られた。環状核から多形核に移行するにしたがってECF-Lの量が減少することがわかった。また、また核内には存在せず、細胞質に局在していた。日本住血吸虫、メコン住血吸虫の肝臓内の虫卵結節におけるECF-Lの役割を検討するために肝臓から虫卵結節を単離した後一定時間培養し、ECF-L産生量をウエスタンプロットで解析した。その結果日本住血吸虫感染では、感染後6週では高い産生が見られるがその後急激に減少した。虫卵結節の繊維化の経時経過と一致が見られた。一方メコン住血吸虫感染では、15週の慢性期への移行期にECF-Lの高い産生が見られた。メコン住血吸虫では空胞化した虫卵結節が多く、繊維化も日本住血吸虫に比べて不完全であった。これらの結果から、ECF-Lが未熟な好酸球に多く発現されており、虫卵結節形成に役割を持っている可能性があることがわかった。
|