研究概要 |
マラリア伝搬阻止ワクチンは媒介蚊体内でマラリア原虫の生活環を断ち、それ単独でマラリアの流行を抑制できるのみならず、他のマラリアワクチン及び治療薬に対する新たな耐性原虫の拡散も阻止できると考えられ、開発が進められている。現在その効果判定法は、ワクチン抗原で免疫された動物の抗血清と生殖母体感染血液を混合し、メンブレンフィーダーを用いて蚊に吸血させる方法を用いて評価している。しかしこの方法が,in vivoの状態をどの程度反映しているか、またその作用メカニズムについては流行地での臨床試験を行うまでは不明である。したがって、ワクチン候補抗原の同定及び作用メカニズムの研究には、ワクチン抗原で免疫したマウスに原虫を感染させ、蚊に直接吸血させることのできるネズミマラリアを用いたin vivoモデルが必須と考えられる。本研究は、ネズミマラリア原虫Plasmodium yoeliiを用いて新規の生殖体表面蛋白由来の伝搬阻止ワクチン抗原を同定することを目的として実施した。昨年度は、ネズミマラリア原虫P.yoeliiの蚊体内の早期ステージである生殖体表面蛋白に対する単クローン抗体を作成し、生殖母体を認識する単クローン抗体が得られた。そこで今年度、P.yoelii感染マウスにこれらの単クローン抗体を受身免疫し、その前後でそれぞれ、V.Anopheles stephensiに吸血させ単クローン抗体の伝搬阻止効果を評価した。その結果、得られた2種類の単クローン抗体いずれの受身免疫マウスにおいても、有意な伝搬阻止能は確認されなかった。そこで、この動物実験モデルを用いて、既知の抗原であるオーキネート表面蛋白Pys25を用いて粘膜免疫法という全く新しい免疫方法の有用性について評価を試みた。その結果、組換えPys25を粘膜アジュバントとともに経鼻免疫したところ、高い抗体価の特異抗体が誘導されたため、そのマウスを用いた伝搬阻止活性を上記の方法で測定した。その結果、すべての免疫したマウスで完全な伝搬阻止活性が誘導された。
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