線虫感染に伴い小腸粘膜で増加するマスト細胞は旋毛虫や糞線虫などの排除や感染防御に深く関わっており、即時型アレルギーの病態形成や炎症・免疫反応においても重要な役割を演じている。本研究はマウスやラットマスト細胞に発現するE-カドヘリンがヒトマスト細胞においても発現しているか解析した。ヒト由来マスト細胞株HMC-1においてもE-カドヘリンは発現し、E-カドヘリンを介した上皮細胞との接着能を有していたことからマスト細胞に発現するE-カドヘリンは種を越えて存在している可能性が示唆された。マウス粘膜型マスト細胞(MMC)に特異的に発現するプロテアーゼ(mMCP-1)は旋毛虫の排除に関与することが報告されている。E-カドヘリンを発現する小腸粘膜上皮細胞と小腸粘膜上皮内の粘膜型マスト細胞の接着分子の関係を明らかにするため、mMCP-1を発現する培養粘膜型マスト細胞を用い解析した。培養粘膜型マスト細胞にはE-カドヘリンおよびそのヘテロリガンドであるインテグリンαEβ7が同時に発現し、細胞間接着アッセイによりE-カドヘリンを介する接着能を有していることを明らかにした。次に、線虫感染マウス小腸においてc-kitをマスト細胞の指標としMMCにインテグリンαEβ7が発現しているか解析した結果、小腸粘膜上皮に存在するc-kit陽性MMCにインテグリンαEβ7の発現を認めた。以上の結果から粘膜型マスト細胞に発現するE-カドヘリンおよびインテグリンαEβ7はE-カドヘリンを介する接着能を有していることが明らかとなった。MMCは小腸粘膜上皮細胞間に存在し上皮細胞はE-カドヘリンを発現することから、粘膜型マスト細胞は上皮細胞とE-カドヘリンおよびインテグリンαEβ72つの分子を介し接着し局在することが示唆された。
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