研究概要 |
本研究ではブタ回虫を用い、酸素分圧に応答する蛋白群、とくにエネルギー生成系や、酸素代謝に直接関与する酸化還元系蛋白の発現制御を包括的に解析することによって、好気から嫌気的代謝への転換の分子機構を解明するのが目的である。そのため、エネルギー生成系の中心的オルガネラであるミトコンドリアと重要な酸化還元蛋白を対象とし、本年度は、1.回虫成虫体壁のプロテオーム解析2.感染幼虫と宿主肺から回収した幼虫のミトコンドリアのプロテオーム解析を立案した。以下に項目番号順に進行状況と実績概要を述べる。1.回虫成虫体壁(クチクラ層除去)のホモジェネートを作製し、未破砕の組織や核をふくむ分画を2800rpm,10minの遠心で除去したあと、その上清をさらに超遠心機をもちいて33000rpm 1hr遠心、顆粒分画と可溶性分画を得た。研究分担者らが開発した、凍結融解によって作製されるNycodenzの密度勾配遠心法により、顆粒分画をミクロゾームとミトコンドリアにさらに分画することを試みたところ、電顕形態的にほぼ均一な分画を得ることに成功した。2.については感染幼虫の細胞分画を1.と同様な方法で行なったが、強靱なクチクラ層の存在のために組織破砕が十分でなく、成功するには至っていない。現在、微小な幼虫からクチクラ層をマイルドな条件で剥離する方法を検討中である。プロテオーム解析に必須なランドマーク蛋白であるシトクロムb_5の大腸菌による発現系については、論文が受理され印刷中である。
|