1.Trypanosoma cruzi感染による宿主細胞のアポトーシス抑制機構を解明するため、感染、非感染細胞におけるアポトーシス関連遺伝子の転写レベルの差異をDNAマイクロアレイ法により解析した。T.cruzi感染細胞では、insulin-like growth factor結合タンパク質5、6、mitogen-activated protein kinase、cellular FLICE inhibitory protein(cFLIP)遺伝子の発現が増加し、GAPDH、アクチン、p53、cyclinD2遺伝子の発現が減少していた。また、Fasによりアポトーシスを誘導すると、アポトーシスを誘導する遺伝子群(カスペース、I-κB、細胞増殖抑制遺伝子等)、抑制する遺伝子群(アポトーシス抑制遺伝子IAP、cFLIP、Bcl2like2、細胞増殖促進遺伝子等)両者の発現が上昇した。T.cruzi感染は宿主アポトーシス経路の初期過程を抑制することから、初期抑制遺伝子として知られるcFLIPに着目した。 2.ノーザンブロット法により、cFLIP遺伝子の発現はT.cruzi感染により上昇し、Fas刺激後、alternative splice variantsの転写が増加していることがわかった。cFLIPの全長をコードするcFLIP_LmRNAの他に、variantsとしてFLAME1および低分子量のバンドが検出された。しかしながら、タンパク質としてはcFLIP_Lのみが発現しており、そのタンパク質含量は非感染細胞に比べ感染細胞ではおよそ11倍増加していた。 3.ラットにT.cruzi Sylvio X10/7株を感染させ、急性期動物実験モデルを作製した。心臓組織切片を作製した。現在、Sylvio X10/4株による慢性期の病態を確立中である。
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