本年度は、新たなCD8陽性T細胞誘導エピトープの検索については現在進行中であるが、既に同定した配列ANYNFTLVへの免疫応答を指標にしたT細胞性免疫応答誘導手法の開発については以下に記載する新たな知見の確立があった。即ち、細胞内寄生体Trypanosoma cruzi原虫特異抗原遺伝子とIL-12遺伝子との共免疫により、ANYNFTLV特異的なCD8陽性T細胞の誘導が促進され、感染実験においてマウスの生存が改善され防御免疫応答が増強された。しかしながら、4-1BBL遺伝子、CD40L遺伝子との共免疫実験では、これらの遺伝子によるDNAワクチンの防御免疫効果増強活性を認めなかった。一方、自然免疫系との組合せ免疫療法により獲得免疫応答であるDNAワクチン効果が増強されるか否かを検討した。DNAワクチン投与時ないしは原虫感染時にNatural killer T(NKT)細胞を特異的活性化物質であるα-galactosylceramideにより刺激を加え、原虫感染実験およびCD8陽性T細胞の誘導レベルの判定を通しで期待される効果が誘導されるかを調べた。しかしながら、NK T細胞の活性化により、ANYNFTLV配列特異的なCD8陽性T細胞の誘導はむしろ有意に抑制され、感染実験においても血中原虫密度上昇のDNAワクチン投与による抑制効果がNK T細胞の活性化により消失し、最終的な生存率も悪化する事を明らかにした。最後に、補助刺激分子修飾によるT細胞性免疫応答誘導手法への効果を検討した。今年度はCD28-CD80/CD86補助刺激分子活性化経路のDNAワクチン効果への影響を検討したが、本補助刺激分子経路の欠失によりANYNFTLV配列特異的なCD8陽性T細胞の誘導は全く観察されなくなり、DNAワクチンによる防御免疫能も消失する事が明らかになった。
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