2年間の研究遂行の結果、以下の知見を確立する事に成功した。即ち、1、細胞内寄生体に対するワクチン手法の開発を目指すための実験系を、Trypanosoma cruziを用いた動物実験モデルで確立した。2、原虫抗原trans-sialidase surface antigen(TSSA)をコードするDNAワクチン手法により、MHC拘束性にB6マウスのみが防御され、この応答がT細胞依存性である事を証明した。3、抗原上にANYNFTLVというCD8陽性T細胞誘導エピトープを同定し、本エピトープに対する免疫応答を指標にワクチン効果を判定できる実験系とした。4、IL-12遺伝子をgenetic adjuvantとして用いる共免疫手法を施行した結果、ワクチン手法効果が増強される事を証明した。5、NK T細胞の特異活性化物質を用いたワクチン手法の増強効果を検討した結果、本細胞群の活性化はむしろワクチン手法へ悪影響を及ぼす可能性がある事を示唆した。6、CD28-CD80/CD86補助刺激経路が、T細胞誘導を目的とするワクチン手法の効果発現に必須である事を証明した。7、新規のgenetic adjuvantを検索した結果、RANKL遺伝子がDNAワクチンおよび組換えウイルスを用いた免疫時に、CD8陽性T細胞の誘導レベルを増強し、防御免疫効果を高める事を初めて明らかにした。一方、CD40L遺伝子は、従来報告されていたようなadjuvantが無い事を示唆した。その他、4-1BBL遺伝子にもadjuvant効果が無い事が示された。8、また、他の細胞内寄生体であるLeishmania majorを用いた実験の結果、ICOS/B7RP1補助刺激経路が細胞内寄生体感染に対する防御免疫応答の誘導に欠かせないものである事を示した。 これら一連の結果より、細胞内寄生体に対する普遍的なT細胞ワクチン手法の最適条件が示され、今後の検討へつながる解析結果となった。
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