研究課題
基盤研究(C)
我々は、細胞外マトリックスタンパク質の一つであるオステオポンチン(osteopontin, OPN)とマラリア感染との関連について検討を行った。最初にOPN wild(WT)マウスとOPN KOマウスを用いP.chabaudiの感染経過を比較した。WTマウスは感染から回復したが、KOマウスでは感染率が上昇し続け、死亡した。この時のKOマウスとWTマウスでの各種サイトカインを比較すると、KOマウスでTh1関連サイトカインの有意な低下が認められた。次の検討として、ヒトのマラリア感染例においてもマウスでの結果と同様であるか検討した。検討対象はベトナムで熱帯熱マラリアと診断された症例の血液161検体とした。OPN mRNAは、161例中134例(83.2%)に認められた。OPN mRNAの発現とサイトカインとの関連において、OPN(+)症例のTh1関連サイトカインはOPN(-)症例のそれらに比べ有意に高かった。以上の結果から、OPNは熱帯熱マラリア感染においても細胞性免疫に関与していることが推測された。一方、OPNは感染防御機能以外に肉芽形成に関与することが報告されている。脳マラリア患者の脳組織内で見られる肉芽腫にOPNが関与しているか検討を加えた。脳マラリア患者の脳組織を免疫組織化学的手法でOPNを検出すると、マラリア原虫感染赤血球sequestrationが見られる血管周囲および肉芽腫に特異的局在が認められた。OPN陽性細胞は脳組織内に浸潤したマクロファージおよびグリア細胞であった。グリア細胞におけるOPN発現機構は、マラリア感染による脳関門障害部位からOPN陽性マクロファージおよび血中のTNF-αが脳内に浸潤し、そのTNF-α刺激によりOPを発現していることが認められた。以上、OPNは感染に対し、防御という面の他に、脳マラリアにおける肉芽腫形成の病因となっていることが示唆された。
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Acta Tropica 87
ページ: 295-300