研究概要 |
日本住血吸虫感染マウスにNOS阻害剤の投与を行い、感染6週後に寄生虫体数を調べた. その結果、阻害剤を投与することにより感染防御効果が高まることを初めて認めた.更に注目されたことはL-NAME投与のみならず、コントロールとして併用したD-NAMEでも効果を認め、C57BL/6マウスにおいては後者でより一貫した感染防御効果があったことである.C57BL/6マウスでのD-NAMEの投与効果は濃度、時期、処理期間で大きく異なった.投与法を詳細に検討した結果、濃度は50-100μg/ml,投与時期はセルカリア感染後14-24日(肝内期)に効果があることが分った.期間は6日間の連続投与が適当であった.NOS阻害剤の効果を種々のサイトカインノックアウトマウスを用いて検討した時、IFN-γKOマウスではD-NAMEで防御効果を示すが、L-NAMEは無効であり、IL-4KO, IL-13KOマウスではそれとは逆にL-NAMEで明らかな効果を示した.C57BL/6マウスでの結果と合わせ、光学異性体の効果が異なるサイトカイン環境下でこのように変ってくることは極めて興味ある結果である.NOS阻害剤投与マウスでどの様にNO産生が変化するか調べた.C57BL/6マウスにおいてはD-NAME投与でNO産生が高まることを認めた. 異性体で異る効果を示すIL-13KOについて同様に検討したとき、逆の結果が認められた.即ち、L-NAME投与でNOは増加していた.これらの結果からNOS阻害剤の投^によりNO産生が高まり、感染防御効果が亢進したことが考えられる.NOS阻害剤投与後のサイトカイン産生の変化についても検討したが、感染防御効果を示す群ではIL-10産生が低下する傾向を示したことは興味深い.以上の如く、我々の実験結果はNOS阻害剤投与によりNO産生が高まり日本住血吸虫に対する感染防御効果が高まることを示している.
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