研究概要 |
脳に豊富な蛋白質として記載された14-3-3は動植物の別なく単細胞生物から哺乳動物まで広く分布し,これに結合する多くの蛋白質が報告され,細胞周期,アポトーシス,その他のシグナル伝達に関与していることが推定されている。Trypanosoma b. brucei(Tb)について14-3-3の解析を行った結果,以下のことが明らかとなった。 1)Tbで二つの14-3-3アイソタイプ(I, II)の遺伝子をクローニングし,リコンビナントを得て,交叉のない各々に対するラットモノクロナル抗体を得た。 2)14-3-3としてのモチーフは存在しながら,Iはホモダイマーを形成するが,IIは形成しないし,Rafやダイフォペインとの結合もみられず,多くの試行にもかかわらず他の結合蛋白質が回収できないことから,哺乳動物とは14-3-3の性状が異る。 3)dsRNAi目的の遺伝子ノックダウンに誘導以前のbasal levelの発現が殆どないpQuadra(pQ)を開発した。 4)pQを用いて,procyclic型(pr)の14-3-3をノックダウンすると複数の鞭毛を有し歪みのある不整な形状に変形し,なり核やキネトプラストの不整合配分が生じて,増殖は抑えられた。 5)pQを用いてblood stream型の14-3-3をノックダウンすると,prより早期に劇的な形態変化を生じ,増殖は抑止された。 6)protein phosphatase(pp)のインヒビターであるオカダ酸添加による変形と酷似しており,ppとの関連から,アフリカトリパノソーマ症の治療標的に繋がる結果を得た。
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