研究概要 |
腸球菌のフェロモン依存接合伝達プラスミドについて1)接合伝達機構の解析と2)1)の解析結果を応用して臨床分離バンコマイシン耐性腸球菌KV22の解析を行った。 (1)平成14年度に引き続きフェロモン受容体蛋白TraAの機能局在を調べた。pPD1 TraA(321aa)とpAD1 TraA(319aa)のキメラ蛋白、モザイク蛋白のDNA結合特異性、フェロモン結合特異性を親和クロマトグラフィーを用いた検出法であるDPAC法、PPAC法によって測定した。DNA結合、フェロモン結合にそれぞれTraAのamino末端150aa, carboxyl末端150aaが必要であることに加え、それぞれの末端30aaの置換によってDNA結合能、フェロモン結合能が変化することが明らかになった。 (2)TraAの調節遺伝子としての作動機序を明らかにするためにDPAC法とPCRによるDNA断片、overlapextension PCRによるモザイクDNA断片を用いてpAD1 TraAが結合するDNA部位の同定を行った。これまで報告されていたpAD1 TraAの結合DNA部位は単独ではTraAと結合せず、この領域を必要としない結合領域が他に2カ所あることが明らかになった。 (3)本研究において、KV22から接合伝達によってpCF10が分離されること、KV22が合成フェロモンcCF10,cAD1に反応すること、PCR、サザンハイブリダイゼーションによってそれぞれのフェロモンのレセプター遺伝子が検出されることが明らかになっていた。KV22のプラスミドDNA中にpCF10,pAD1に対応するバンドが見つかっていなかった。腸球菌株V583株のgenome sequenceからこの株が染色体上にフェロモン依存接合伝達プラスミドを持っていることが明らかになり、隣接するpathogenicity island(PAI)との関連が論じられている。KV22においてpCF10,pAD1が染色体に組み込まれPAIの形成に関連している可能性高いと考えた。
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