開発途上国におけるニュモシスチス・カリニ(Pc)肺炎症例より呼吸器検体を採取する方法として、現地における医療経済情勢の見知から喀痰誘発法を選択した。同法によって得られる喀痰を利用してPcにおけるサルファ剤標的酵素であるdihydropteroate synthase(DHPS)の核酸増幅が可能であるかを検証した。 具体的な方法としては、当研究所附属病院において新規に診断治療を受けられたPc肺炎症例(気管支肺胞洗浄液を用いてPc肺炎の診断が確定された)3例を対象とした。Pc肺炎の診断確定後に、超音波ネブライザーを利用して3%食塩水を吸入して喀痰を誘発し、検体として喀痰を前半と後半に分けて採取した。粘液溶解処理・核酸抽出処理を施行した後にDHPS領域の核酸を増幅するためにnested PCR反応を行った。得られたPCR産物を用いてDHPS領域の塩基配列及びアミノ酸配列の解析を施行し、遺伝子変異及びアミノ酸変異の有無を検討した。 その結果、喀痰として検体が得られた場合、nested PCR法によってDHPSの塩基配列及びアミノ酸配列の解析が可能であった。経時的に検体を採取した場合、Pc肺炎に対する治療(ST合剤)を施行した第18日目においても同領域の塩基配列及びアミノ酸配列の結果が得られた。今回得られた塩基配列及びアミノ酸配列としては変異は見られなかった。 以上の結果より、喀痰誘発法を用いたPcにおけるDHPS領域の核酸増幅は可能である。平成15年度において、タイ国の病院(Lampang Provincial Hospital)におけるHIV感染者を対象としたコホート研究を実施する予定である。
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