研究概要 |
細胞内寄生細菌であるリステリアListeria monocytogenesの弱毒株Δ(デルタ)2をキャリアとした抗結核DNAワクチンを作製し、その免疫誘導効果、感染防御効果をマウスを用いて検討した。ワクチンの標的分子として、BCG菌と結核菌の共通した主要分泌タンパクであるAntigen 85A (Ag85A),Antigen 85B (Ag85B)分子及びそれらと構造的に類似しているMPB/MPT51分子(BCG菌ではMPB51,結核菌ではMPT51)を用いた。平成14年度にこれらの分子をコードしているDNAを用いDNAワクチン、p3L118R-Ag85A,p3L118R-Ag85B, p3L118R-MPB51を作製し、さらにそれらをリステリアΔ2株に導入した。平成15年度はこれらをC57BL/6及びBALB/cマウスに免疫し、その免疫誘導効果、感染防御効果をマウスを用いて検討し、以下のことが明らかとなった。 (1)Δ2/p3L118R-MPB51 (MPB51 DNAワクチン保持弱毒リステリアΔ2株)を、C57BL/6マウスに腹腔免疫、BALB/cマウスに静脈免疫し、DNAワクチンが脾臓、肝臓内に移行しているか否かを、PCRでMPB51 DNAを検出することにより検討した。その結果、臓器細胞内にDNAワクチンが移行していることを確認した。 (2)C57BL/6マウスにΔ2/p3L118R-Ag85A,Δ2/p3L118R-Ag85B,Δ2/p3L118R-MPB51を腹腔免疫することにより、免疫マウスでPPD特異的足蹠腫脹反応を認めた。 (3)免疫C57BL/6マウスから脾細胞を調製し、PPDでin vitro刺激を加えたところ、PPD特異的に細胞増殖、IFN-γ mRNAの発現、IFN-γタンパクの産生を認めた。なお、IL-4,IL-5タンパクの産生も検討したが、有意な量の産生を認めなかった。 (4)BALB/cマウスにこれらの弱毒リステリアキャリアDNAワクチンを投与した後、結核菌H37Rv株(強毒株)を感染させ、10ヶ月後に脾臓、肝臓、肺中の結核菌数を計数したところ、Ag85A,Ag85B,MPB51 DNAワクチン投与群でそれぞれ有意な菌数の減少を認め、これらDNAワクチンの結核菌感染防御能を確認できた。Ag85A,Ag85B DNAワクチンの感染防御能はこれまでに報告されているが、MPB51分子ワクチンの感染防御能は報告がない。本研究により、MPB/MPT51分子がAg85A, Ag85B分子に匹敵する感染防御抗原であることが明らかとなった。
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