研究概要 |
ヒト宿主の食細胞は活性酸素や活性窒素などを産生して、侵入してくる細菌を殺す。しかしながら、細胞内寄生細菌の中には、宿主の防御機構を無力にしたり、それらから逃避する機構を持っており、食細胞に好んで寄生するものがある。Ehrlichiosisを引き起こす完全細胞内寄生性リケッチアAnaplasma phogocytophilwnは好中球に寄生するが、本細胞の食細胞NADPHオキシダーゼの主要構成分子gp9^<phox>の遺伝子CYBBや調節因子rac2遺伝子RAC2の転写を特異的に阻害したり、p22^<phox>の分解を進めることが知られている。本研究では、単球/マクロファージにもっぱら寄生する近縁リケッチアEhrlichia chaffeensisの感染に対して宿主細胞がNADPHオキシダーゼ系をどのように制御しているかを解析し、以下の結果をえた。 1.THP-1のE.chaffeensis感染率は1日でむしろ低下し、2日で急上昇、3日でほぼかわらず、4日でほとんどの細胞が死滅した。 2.食細胞のSOD感受性スーパーオキシド産生は幾何級数的に上がり、3日で約22cpm/細胞となった。この上昇は、少なくともgp91^<phox>,p47^<phox>,p67^<phox>のmRNAの増加とp47^<phox>の発現の増加を伴っていた。 3.細菌の侵入が直接活性酸素産生系の上昇に関与しているかどうかを知るためにダブルチャンバーを用いたところ、直接細菌に触れない上室のTHP-1細胞でも基本的に同じ現象が観察された。培養済み培地で新たに培養したTHP-1細胞での感染細胞培地依存性SOD感受性スーパーオキシド産生は、熱処理でその約2/3が消失した。 4.上述と基本的に同じ結果がの細胞破砕上清でも得られた。 単球系のTHP-1細胞はE. chaffeensisの感染に対して活生酸素産生系の発現を上げ、スーパーオキシドの産生能を高める。しかしながら、この増加は殺菌剤としての働きを発揮するには少なすぎると思われる。なんらかの細胞内刺激伝達に関っているのかもしれない。また、この反応には直接THP-1細胞が細菌に接触する必要はなく、細菌由来の因子が関っている。その多くは熱感受性であることから、タンパク質の可能性が高い。E. chaffeensisにはリボ多糖LPS生合成系が無いので、熱安定性因子はこれとは異なるものと考えられる。
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