研究概要 |
1.ヒト網膜抗原であるBrn3b、ベーチェット病患者由来S.sanguis菌体抗原Bes1および熱ショックタンパク(HSP)の合成ペプチドを作成し、患者血清との反応性を検討した。患者血清はBrn3bの2種類、Bes1の1種類およびHSPの合成ペプチドと高い反応性を示した。このことから、ベーチェット病患者では自己網膜関連のBrn3bに対する抗体が出現し自己傷害的に作用していることが示唆された。また、菌体抗原Bes1に対しても強く反応することから、S.sanguis感染によって誘導されたBes1に対する抗体が交差反応性に自己傷害作用を示すことが示唆された。 2.無菌マウスにベーチェット病患者由来S.sanguisを投与し、同時に局所に火傷あるいは擦過刺激を与えた場合、細菌投与マウスで強い局所の炎症性傷害が出現した。さらに、患者由来菌の菌体成分に対する遅延型過敏反応についても細菌投与マウスで強い反応が誘導された。これらの結果は患者由来のS, sanguisがベーチェット病の発病要因として有力な候補であることを強く示唆するとともに、S.sanguis保有抗原が宿主と交差反応をして病巣拡大に関係することを示唆した。 3.ヒト胎児由来cDNAライブラリーからBrn3bの合成を目的として設計されたプライマーを用いてPCR法でBrn3b DNAの合成を試み、約1kbのPCR産物を得ることができた。合成されたPCR産物を大腸菌の核酸に導入したところBrn3bタンパクを発現する大腸菌株を得ることができた。この菌株は抗Brn3b抗体で凝集され、一部の患者血清ともよく反応した。この結果から、網膜関連抗原であるBrn3bがベーチェット病の発症に深く関係していることが示唆された。現在、Brn3b遺伝子を含む発現ベクターのプラスミドを用いてTGマウスの作製段階である。
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